CONSULTING COLUMN
最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ
12月は4回に亘り2024年の住宅業界の時流予測をお伝えさせていただきます。前回の1回目は2024年の住宅業界の全体予測として、コロナ前、コロナ禍、コロナ後の3つの時間軸で変遷をたどりながら、2024年の住宅業界の予測をお伝えしました。簡単に内容を要約すると、2024年の住宅業界は①より業績の二極化は進む②より倒産廃業は進む③よりM&A(企業間統合)の3つがトピックスとなり、激変する時流に適応し、自社が一番になれる土俵を自ら決め、そこで一番になるという根幹となる戦略である力相応一番で生き残ることが重要だと提言させていただきました。
そうした来年2024年の全体像をつかみながら大局観を持ったうえで、経営手法である商品、集客、営業、工務、組織を考えていくことをオススメします。今回の2回目は商品&集客予測について。商品に関しては、低価格が特徴だったローコスト住宅もウッドショックによる度重なる資材高騰で、ウッドショック前のときのような価格の優位性はなくなったかのように見えます。そのことによって、ローコスト住宅でもデザイン性や性能面を強化する傾向にあります。デザイン住宅も性能面を強化したり、高性能住宅もデザイン性を強化したり。そうなるとどうなるのか?それは他社との違いがわからないコモディティ(同質)化が進みます。
住宅商品に関しては、そもそも商品というよりも、お客様の要望を叶える作品と意識が地域ビルダーほど高い傾向にあります。商品と作品の違いは端的に言うと、素人が良いと評価できるのが商品で、玄人が良いと評価するのが作品です。商品発想がないというのは、そもそも自社の家づくりに特徴がないと言っているのと同じです。そして商品と集客は強い関連性があります。それでは、2024年の住宅業界の商品&集客予測についてお伝えさせていただきます。
地域ビルダーほど作品発想が強いとお伝えしましたが、ハウスメーカーの商品が優れているとは思いません。なぜなら、例えば外観写真を並べて、この外観はこのメーカーとすべて当てるのは難しいからです。車であれば違いはわかります。家はわからないのです。商品開発で大事なのは、流行りモノを取り入れることよりも、自社の強みがより伝わるように特徴を尖らせるべきです。元々は外壁のタイルが特徴だったにも関わらず、他社と同じような設備や仕様を取り入れたことによって、強みが消えることはよく起こります。この自社の強みを言い換えれば、お客様が自社をもっとも評価してくれている点です。
商品は何を売るか?よりもどのようなお客さまに売るか?を決めるために重要です。商品が変われば客層が変わります。客層が変われば集客を変えなければなりません。売れていると聞いた商品パッケージを導入しても売れないのは、その商品の良し悪しや地域性は関係ありません。その商品を欲しいと思ってもらっているお客さまを集客できていないからです。儲けを最大化するための基本原則はビジネスモデル化です。まだ商品化の発想を持たれている経営者は少なくありませんが、それがビジネスモデル化できているが儲かっているか儲かっていないかの分岐点です。ビジネスモデル化とは、誰(ターゲット)に対して?何(商品)を?どのように(集客・営業)?の3つの要素がわかりやすく伝わり、尚且つ一貫性があることが重要です。そしてこの3つの要素の中でもっとも重要なのは商品ではなくターゲットです。こうした考え方を、マーケットインやプロダクトアウトと言います。住宅ビジネスに必要なのはマーケットインで商品開発もマーケットインの発想で進めなければ失敗します。また、このターゲットを絞り込むほど、そのあとのオペレーションはシンプルになり儲かるのです。
リブランディングと言う言葉を耳にされたことがあるかと思います。ウッドショックによる資材高騰で販売価格が上がったことで、商品が変わったのではなく客層が変わったのです。客層が変わったのであれば、その客層に合った商品開発をすべきです。そしてそれは、これまでの延長線上で変えるリニューアルではなく、新たな発想に立ち返ってリブランディングすべきです。
2024年の住宅業界の商品予測は下記の3つです。
・商品の販売価格帯は二極化する
・嗜好性×ニッチ商品のニーズが高まる
・儲かる家が最重要の経営指数となる
商品の販売価格帯の二極化に関しては、資材価格の高騰で苦しんでいるのはローコスト住宅ではありません。大手ハウスメーカーが価格を抑えた新商品を続々発表し、中価格帯の地方工務店の競合が激化しています。つまり、高付加価値型で価格を一気に引き上げた商品開発を行うのか?それともコスパ重視型で商品開発を行うのか?のふたつにひとつで、ウッドショック前の中心価格帯を変えず中途半端な価格帯だと売れないどころか利益も取れません。大事なことは値上げを行うというよりも利益を確保するということで、それよりも大事なことは値上げ以上の価値を提供することです。営業利益率10%を確保するには、住宅ビジネスは販管費で20%はかかるため粗利率30%は確保しなければ厳しいのです。
嗜好性×ニッチ商品の需要が高まることに関しては、これまでは20代後半から30代で初めて家づくりを行う子育て4人家族がターゲットでしたが、そうしたターゲットはマイノリティになりつつあります。正しい表現を使うと増えていないのです。それよりも2人暮らしや3人暮らしといった少世帯化は進んでいます。家のサイズも30坪以下が増えています。さらにこれは今年感じたことですが、筋トレルームやヨガルームがある間取りやペットと暮らす家など嗜好性が高くニッチな商品へのニーズが高まってます。儲かる家が最重要の経営指標となることに関しては、粗利率30%を確保する商品開発とハイイメージ付き大衆商法です。ハイイメージ付き大衆手法とは、付加価値のグレードに位置する商品を売れ筋価格帯で売るという手法で、商品は高いものを高く魅せて売るのは難しく、また安く魅せて安いものを売ると価格競争に陥ります。なので、ハイイメージに感じさせるけれども、料金はそれほど高くない大衆的な商品を売るのがもっとも売れます。(コラム掲載不要→)激変する2024年の集客はどうなる?気になる集客予測とは?
2023年より集客数は減少することに関しては、対策を取れば現状維持、まだ販促手法に伸びしろがある場合、増加は可能ですが、業界として1割は減少する見込みです。その最大の理由としては、集客が増える要因がないからです。直接来場より間接来場の重要度が増すことに関しては、これが集客減少の要因のひとつになっており、反対に集客を増やすポイントでもあります。直接来場とは、チラシなどの紙面広告からの予約獲得と、ウェブやSNS広告からの予約獲得です。集客が減少しているというのは、この直接来場が減っているのです。一方、間接来場とは、資料請求や会員登録、ポータルサイトの反響からインサイドセールスで呼び込んでの予約獲得です。間接来場が増える理由としては、来場数は減少していますが反響数は減少していないからです。
結果分析が集客の生命線になることに関しては、どんな手を打つか?以上に結果がどうだったのか?その結果をもとに改善を図り続けることが重要なのです。改善を図るには結果を正しく把握しなければなりません。結果を正しく把握するには、媒体ひとつひとつの反響数や反響単価のみならず、チラシであればどのエリアからどのタイミングで反響が取れていたのか?反対に取れなかったのか?QRコードは何件読み取られたのか?そこから来場予約は何件獲得できたのか?ウェブ広告は、Googleの分析ツールがユニバーサルアナリティクス(UA)からGA4に仕様変更したことにより、これまでは「点」でしかわからなかったデジタル上の顧客の動きが「線」でわかるようになり、より詳細な分析が可能になりました。広告からのクリック単価はどうだったのか?クリック率は?前提として計画どおりの広告費を消化できていたのか?ウェブ広告の数値は悪くないのに反響が取れていないとしたら遷移先に問題はないのか?そうした結果分析を行わず販促を行ったところで成果は得られません。仮に得られたとしても、必要以上にコストがかかってしまい非生産的です。市場や地域性などの外部要因を原因にするのではなく、自社の変革が必要なのです。