CONSULTING COLUMN
最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ
人気YouTuberの「四天王エース」をゲスト講師にお招きしてセミナーを開催しました。たくさんの経営者の方々にご参加いただいたのですが、この方は単なるYouTuberだけでなく、ご自身もハウスメーカーや工務店で住宅営業をされていた経験をお持ちで、チャンネルでは中立的な立場で、それぞれのメーカーやビルダーの特徴をわかりすく解説されています。チャンネル登録数は5万人を超え、これまでに大手ハウスメーカーと地域のパワービルダー100社以上を調査されています。
顧客動向は常に変化しています。特に新築住宅は、いつの時代も基本的に20代後半から30代の子育て家族がメインターゲットなので、より変化を感じるのです。10年以上前は土曜日の朝刊に折り込まれた見学会チラシを見て、土曜日の午前中に来場していただいていました。勿論、今はそんなことはありません。論理的に説明するなら、以前は認知から来場までのアクションタイムが短く、来場から契約までのセールスタイムが長かったですが、今は来場するまでにお客さまが積極的に情報収集をするためアクションタイムが長く、情報収集をしたうえで会社を絞って来場するためセールスタイムが短くなっています。
と言うことは、チラシやウェブからの直接来場型の集客戦略も変えていかなければなりませんが、せっかく来場していただいたのに、現場の営業マンがその変化に適応できていなければ契約にはなりませんし、アポすら取れません。「来場が減っているにも関わらず契約率も減っている…」「契約率以上にアポ率も減っている…」となっていると、早急に営業戦略も変えなければなりません。そこで今回のコラムでは、YouTuber「四天王エース」が説く営業スタイルのベストアンサーについて一緒に考えていきましょう。
認知から来場までのリードタイムと、来場から契約までのセールスタイムについて営業視点で解説していきます。商談において大きく変わったのは、以前は「あなたの会社のことはよくわからないけど建物が気になってきました」というお客様が大半でした。唯一、会社のことを知っている可能性があるのは、OB客からの紹介客ぐらいでしょう。なので、自社のことをしっかりと知っていただく必要性がありました。当時コンサルティングの場でお伝えしていたのが、見学する建物内には自社の家づくりがわかるPOPを貼ってもらったり、時代が進むとPOPから映像に変わったりと、伝達手法は時代によって変化しましたが、来場客に自社の家づくりを伝えるという目的は同じでした。
そして、初回来場の目的はアポ取りで、お客様からすれば「建物が気になって来てみたけど、建物もこだわっているし、会社もきちんとしてそう」と自社と自社の家づくりに興味関心を持ってもらうことでした。そうでないとアポは取れませんでした。今も自社や家づくりの説明はしなければなりませんが、それが来場時で行っているようであれば、ひょっとしたら変化に適応できていないかも知れません。
ベストなタイミングは来場時ではなく来場前です。お客様が来場してから説明では遅い可能性があります。なぜなら、その情報が正しいか正しくないかは別として、来場していただいているお客様は情報収集をしたうえで来場する会社を絞って、ある種の期待を持って予約を入れてくれています。大事なことは自社のことを来場する前に情報収集してもらえるようにすることです。冒頭でご紹介しました「四天王エース」の動画も、来場する会社を選ぶひとつの手段として見ているはずです。
そうした情報は、自社のウェブサイトやインスタグラム、YouTubeで事前にお客様が見れる環境が整備できていないと、そもそも来場は増えません。まずは自社PRタイムを来場してからではなく来場前のタイミングで行うことです。住宅営業の生産性を高めるポイントは、予約から来場までの期間に、会社と人に対する安心感と家づくりに対する期待感を上げることです。そのために0次接客が必要です。理想は「まだ会ったことがない営業マン(まだ行ったことがない会社)だけど、自分たちのことを理解してくれていそうで、自分たちの価値観と合うかも」と来場前の段階で感じてもらうことです。つまりは精神的な距離感を来場前にいかに詰められるかがです。お互い「はじめまして」ですが、お客さまは事前に情報を収集しています。そこに営業マンが事前接触もせずに、本当に「はじめまして」で接客していてはダメなのです。
同じリードタイムでも、認知から予約してもらうタイミングで必要な情報と、予約から来場してもらうタイミングで必要な情報は異なります。理由は目的が違うからです。前者の目的は予約獲得です。後者の目的は来場獲得ですが同時に契約率を高めることが目的です。契約率を高めるために必要なのが、ヒアリングとヒアリングに基づいて行う事前の商談準備です。
これまでは商談は来ていただいてからスタートでしたが、今は来ていただく前からスタートしています。ある意味、ルールで許されたフライングです。フライングできるからこそ、新入社員や住宅営業未経験の中途社員でも、何も準備を行わない経験豊かな営業マンをも抜くことができるのです。まさに童話の「うさぎとかめ」です。
人気YouTuber「四天王エース」が言うには、YouTubeやインスタグラムで事前に情報を十分に得て、TikTokやリールのショート動画に慣れているZ世代には、自社の強みやモノ(性能や設備)の話を長々しても全く聞いておらず、自社と営業マン個人の背景・ストーリーを語る必要があるとのことです。
そうなれば必要になってくるのが、営業マン自身を魅力的に伝えるツールです。私はこれを“ジシャ&ジブンアプローチブック”と呼んでいます。具体的に必要なのは、あなたはどのような考え方、価値観を持って、その会社で住宅営業を行っているのか?その会社が存在する意義は何何と捉えているのか?あなたは何が得意なのか?お客さまや上司・同僚があなたをどう評価しているのか?これらを見える化したツールです。これを紙で説明してもいいですし、動画にしてもいいと思います。イメージは、結婚式の披露宴で流すムービーです。あのムービーを見ることで、新郎と新婦がどのような人生を歩んで、結婚することに至ったのか?が赤の他人でもわかります。ウェブサイトのスタッフ紹介に記載している内容よりもパーソナルな内容です。
これまで新築住宅は、お客さまと営業マン側に圧倒的な情報(知識)量の差がありました。なので、営業マンが優位に商談を進めることが可能でしたが、ひょっとしたら今はある部分においてはお客さまの方が情報を得ている可能性があります。情報量でマウントを取る営業スタイルは終わりつつあります。これが時代の変化です。変化にあらがうことはできません。変化には適応すべきです。これからは住宅業界もいよいよ本格的にZ世代がメインターゲットになります。上からマウントを取るのではなく、お客さまと同じ目線で同じ景色を見る。そのちょっと差が業績の大きな差になって必ず現れます。