CONSULTING COLUMN
最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ
本コラムをお読みいただきありがとうございます。
船井総合研究所 住宅・リフォーム支援部 マネージングディレクターの日野信です。
営業チームの育成に日々心を砕いていらっしゃる店長・経営陣の皆様、営業マン育成は、現代の経営において避けて通れない、そして多くの企業様が頭を悩ませている共通の課題ではないでしょうか。採用難の今、採用した貴重な人材をいかに早く戦力化するか、ベテラン営業の持つノウハウが属人化し後進に引き継がれないといった問題、そして若手社員がなかなか定着せず、時間とコストをかけて育てた人材がすぐに辞めてしまうといった深刻な悩みを抱えていらっしゃる方も多いかと存じます。
「昔は『背中を見て覚えろ』で育った」「やる気があれば自然とできるようになるはず」そうお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、残念ながら現代の若手、特にZ世代と呼ばれる世代の育成においては、これまでの「根性論」や「感覚頼み」の手法だけでは通用しなくなっています!彼らは明確な目標設定や、具体的な「やるべきこと」、そしてその取り組みが評価される環境を求めています。
マニュアルや動画研修ツールを導入したものの、いまいち成果に繋がらない。社内では話せるのに、お客様の前では言葉が出てこない。このような状況は、単に社員の能力や性格の問題だと片付けてしまいがちですが、実はそうではありません。問題は、彼らを育成するための「仕組み」が確立されていないことにあるのです!
新人営業が現場に立ち、お客様と対峙する中で、彼らが共通して抱える大きな不安があります。これらの不安こそが、成長を阻害する要因となっているんです!
私たちはこれを「新人社員の成長を阻害する三大不安」と呼んでいます。
お客様が競合他社の商品やサービスと比較検討している状況で、自社の強みや魅力を効果的に伝えられない、どう話せばお客様が納得してくれるか分からない、という不安です。
座学やロープレで知識は入ったものの、いざ本番でお客様を前にすると、マニュアル通りに言葉が出てこない、自信を持って話せない、という不安です。
社内のロールプレイングではうまくできたのに、実際のお客様との会話ではお客様の本音や懸念を引き出せず、表面的な会話に終始してしまう、という不安です。
これらの不安を抱えたままでは、新人営業は自信を失い、商談の場で力を発揮できません。結果として契約に結びつかず、成長が停滞してしまうのです。そして、これらの不安を放置することは、新人だけでなく、チーム全体の士気や業績にも悪影響を及ぼします。属人化が進み、特定のエース社員に頼り切りになることで、組織全体の育成力が低下し、結果として人材が定着しないという悪循環に陥る可能性すらあります。
しかし、ご安心ください!実は、これらの問題を解決し、どんな企業でも、あるいはどんな新人社員でもしっかりと育つ、確立された仕組みが存在します!
これは、特定の天才的な営業マンや、一部の企業だけが持つ特別なノウハウではありません。育成成功の原則に則って構築された、再現性のある「仕組み」なのです。
この確立された仕組みは、大きく分けて二つの要素から成り立っています。
一つは、若手社員が自ら成長しようと思える、そして「言い訳できない」状況を作り出す「言い訳できない環境作り」という土台です。
そしてもう一つは、新人社員の成長を阻害する「三大不安」を直接的に解消するための具体的な「行動アクション」です。
では、具体的にどのような「行動アクション」を取れば、新人営業の「三大不安」を取り除き、成長を促進できるのでしょうか?その核となる行動アクションは以下の三つです。
「他社と比較しているお客様への対応ができない」という不安は、多くの場合、お客様に響かない、あるいは分かりにくい説明をしてしまうことから生じます。例えば、住宅会社の事例では、商品のメリット(健康効果、調湿効果、デザイン性など)を羅列しても、お客様には「なるほどね」で終わってしまい、自分事として捉えてもらえません。
これを解消するためには、話すべきトークを「絞り込む」ことが重要です!伝えたい情報を全て盛り込むのではなく、お客様が最も関心を持ちやすい、あるいは不安に思っているポイントに焦点を当てるのです。
さらに重要なのは、業界用語や専門用語を使わず、お客様が「自分事」として、「これなら自分に合うかもしれない」と共感できるようなトークに変えることです。
自然素材の住宅商品を取り扱う会社様の事例では、モミの木の健康効果を単に説明するのではなく、営業担当者自身のアレルギー体験談や、契約したお客様の実例を通じて伝えることで、お客様は「私たちと同じだ」と感じ、共感しやすくなりました。デザイン住宅商品を取り扱い会社様の事例では、デザインや工夫そのものを説明するのではなく、なぜその工夫をしたのかという「背景」をお客様の生活やこだわりと紐づけて説明することで、「それなら私にぴったりだ」と思わせることができました。さらに、建売住宅事業を行う会社様の事例では、会社の在庫消化という営業目線ではなく、お客様が抱える「注文住宅か建売か」という根本的な不安を最優先にヒアリングし、その解消からトークを展開することで、お客様の反応が格段に前向きになりました。
このように、お客様の不安事を最優先にヒアリングし、それに答える形でトークを展開することも、お客様目線のトーク構築において非常に重要です。
「マニュアルや動画があるのに、なかなか話せない」という不安は、単にツールを整備しただけでは、社員によって取り組み方や理解度にばらつきが生じるために起こります。感覚的にすぐに吸収できる人もいれば、具体的な指示や管理がないと動けない人もいます。特に現代の若手社員には後者が多い傾向があります。
これを解消し、全ての新人社員を最速で成長させるためには、「やりきらせるためのサポートの仕組み化」、すなわち「徹底した管理体制」が必要です。動画を「いつ」「何回見たのか」、ロールプレイで「何点取れたのか」「どこが不十分なのか」といった点を、曖昧な感覚ではなく、細かくチェックリスト化し、ルールとして徹底的に管理するのです。この管理体制を効率化するためには、音声AI解析システムの活用が有効です!ロールロールプレイングの音声をアップロードするだけで、自動で文字起こしや採点が行われ、社員自身が客観的に出来栄えを確認し、自主的に練習できるようになります。管理者は学習状況を一括管理できるため、誰がどこでつまずいているのかを正確に把握し、的確なフォローが可能になります。半年で1契約だった社員が、この仕組み導入後半年で6倍の成長を遂げた事例もあります!完璧に現場に立つ準備をさせるためには、トークの整備(マニュアル・動画)と確実に実行させるためのルール化された管理の両輪が不可欠です!
「社内では話せるのに、実際の商談でお客様との会話が深まらない」という不安は、お客様の「心配事」や「本音」を引き出す「背中を押す質問」(テストクロージング)ができていないことから生じます。特に、自分の考えを主張するのが苦手な「需要型」と呼ばれる性格特性を持つ社員に多く見られます。お客様の不安事や懸念を明確にしないままでは、商談は表面的な会話に終始し、次に進みません。お客様に「中古や建売ではなく新築でも、お家づくりの計画は可能ですね!」と言うだけでなく、「新築でお家づくりの計画を進めてみてはいかがですか?」と一歩踏み込んだ質問をすることが、営業において非常に重要です。そうすることでお客様は、「やっていきます」と前向きな返答をするか、あるいは「こういうところが不安で…」と具体的な懸念を示してくれるようになります。この「背中を押す質問」こそが、お客様の心配事を掴み、商談を深めるための鍵となります。
このテストクロージングのテクニックは、ロールプレイングだけでは習得が難しい場合があります。それは実際の商談のリアリティが必要だからです。
そこで有効なのが、実際の「商談音声のフィードバック」です。録音した商談音声を聞き返し、どこでお客様の背中を押すべきだったのか、どのような質問をすべきだったのかを具体的に指摘し、その質問の反復練習を行います。
ここでもAIシステムが役立ちます!商談音声を自動で文字起こしし、特定の箇所を簡単に再生できる機能があれば、長時間の音声を効率的にフィードバックすることができます。
この取り組みを通じて、テストクロージングが苦手だった社員が、約6〜8ヶ月かけてテクニックを習得し、年間の営業成績を劇的に向上させた事例があります。
ご紹介した三つの具体的な「行動アクション」は、それ単体で機能するわけではありません。これらの行動を若手社員に浸透させ、効果を最大限に引き出すためには、「言い訳できない環境作り」という強固な土台が不可欠です!
この土台には、以下のような要素が含まれています。
◆明確な目標設定
「日本一のチームを目指す」といった大きな目標から、個人の具体的な達成目標(例:「今月は二棟」)まで、向かうべき方向を明確にすることがポイントです。
◆数値ベースでの案件管理
目標達成のために、いつまでに何をすべきかを逆算し、数値ベースで案件の進捗を管理することが重要です。
◆共通言語としての明確なルール設定
「競合がいる場合、社名を聞き、決めない理由を聞き、自社が候補か確認する」といった、誰が行っても同じ結果が得られるような、具体的な行動手順やルールを共通言語として定めていきます。詳細なマニュアル作成とその確認も含まれます。
◆フィードバック内容の絞り込み
成長のボトルネックとなっているポイントに絞ってフィードバックすることで、若手社員が混乱せず、何を改善すべきか明確に理解できるようにしていきます。セミナーゲスト講師の事例では、「阻害要因に対応できているか」と「テストクロージングがあるか」の二点に絞ったとのことです。
このような環境が整備されて初めて、若手社員は「何を、なぜ、どのようにやるのか」を理解し、迷うことなく行動に移すことができます。これが、現代の若者たち(Z世代)の育成において非常に重要なポイントとなります。
この確立された仕組みを導入することで、実際に多くの企業様で営業社員の育成に成功し、業績を向上させています!
事例①
成績が伸び悩んでいた社員が、この仕組みを通じてトップ営業マンに成長し、さらには店舗のマネジメントを任される店長へ成長
事例②
営業事務からのスタートながら、弊社からの継続的なサポート(本日お話しした内容の実践)を通じてトップ営業マンになり、現在は、新人育成を担当
これらの事例は、単に個人の能力開発に留まらず、新人が育ち、その新人が次の新人を育成する側へと成長していく、好循環の育成サイクルが構築されることを示唆しています。このようなサイクルが確立されれば、組織全体の育成力が底上げされ、属人化が解消に向かい、採用した人材が定着しやすくなります!結果として、契約率や契約数が安定し、会社の経営基盤がより強固なものとなっていくはずです!
営業社員育成の確立された仕組みは、「言い訳できない環境作り」という土台の上で、「新人社員の成長を阻害する三大不安」を解消するための具体的な三つの「行動アクション」を実行することにあります。
不安1(競合対応)への対応
お客様が「自分に合う」と共感できる競合対策トークを絞り込み、お客様目線での「自分事」化、お客様の不安事優先の視点で準備し、訓練していきます!
不安2(トーク習得)への対応
話すべきトークを完璧に話せるように、マニュアル・動画整備に加え、徹底した管理体制による「やりきらせるためのサポートの仕組み化」を行っていきます!AIシステム活用も非常に有効です。
不安3(商談深化)への対応
お客様の心配事をつかめるテストクロージングのテクニックを、商談音声フィードバックと反復練習で習得していきます!こちらもAIシステムを活用していくことが有効です。
これらの要素を組織的に、仕組みとして取り組むことで、あなたの会社の営業社員育成は大きく変わるはずです!
本コラムでは、営業社員育成の確立された仕組みの原則と、三大不安解消のための具体的な行動アクションについて概説いたしました。
しかし、これらの取り組みを自社に導入し、成果を出すためには、さらに詳細な情報と具体的なステップが必要です。
今回ご紹介した育成事例や、さらに詳細な取り組み内容については、無料のレポートにまとめております。
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