
いよいよ日本の住宅業界は大きな転換期に差し掛かっています。新設住宅着工数が減少の一途をたどる中、法改正や多様化する消費者の価値観など、これまでの常識が通用しない時代が訪れています。しかし、これは単なる逆風ではありません。新たな課題の裏側には、事業を成長させるための大きなチャンスが隠されています。この記事では、船井総研が独自に分析した最新の業界動向をもとに、2025年以降の住宅業界が直面する課題を深掘りし、経営者様が今すぐ取り組むべき具体的な戦略について、わかりやすくお伝えします。
住宅業界の現状:新築不調、中古・リフォームは堅調
まず、現在の住宅市場の状況を正しく把握することが重要です。全体としては、新築住宅は不調の傾向にあります。新設住宅着工数(持ち家)は、20ヶ月以上連続で前年割れが続いており、市場の縮小傾向が顕著です。特に、大手ハウスメーカーの注文住宅は前年比95%〜105%の範囲に留まり、中小企業では80%〜90%とさらに厳しい状況です。 しかし、市場全体が落ち込んでいるわけではありません。中古住宅やリフォーム市場は堅調に推移しています。
- 中古不動産市場の動向:大手企業の再販は前年比110%の成長を維持し、中小企業でも110%〜130%と高い成長率を誇っています。
- リフォーム市場の動向:大手ハウスメーカーや家電量販店系は前年比100%〜105%、地域一番店に至っては105%〜115%と堅調です。
- 建設市場の動向:大手建設会社が前年比110%〜120%、中堅も105%〜120%と好調です。
このように、住宅業界は新築という一つの分野だけでなく、中古・リフォームや建設といった分野にまで広がりを見せており、各分野の動向を正確に読み解くことが、今後の経営に不可欠となります。
2025年ショック:法改正がもたらす影響
2025年には、業界に大きな影響を与える法改正が施行されます。通称「2025年ショック」と呼ばれるこれらの変化は、すべての住宅会社にとって避けては通れない課題です。
1. 省エネ基準適合の義務化
2025年4月より、すべての新築住宅に
省エネ基準適合が義務化されます。これにより、住宅は一定の断熱性能と一次エネルギー消費量削減基準を満たす必要があります。この変更は、環境保護への貢献や住宅の資産価値向上に繋がる一方で、設計の複雑化や建築コストの増加を招く可能性があります。特に中小規模の事業者にとっては、新たな技術や知識の習得、計算業務の増加といった負担が懸念されます。
2. 4号特例の見直し
4号特例の見直しも大きな変化点です。これまで審査が省略されていた小規模な木造建築物も、今後は建築確認審査の対象となります。これにより、設計者の業務が増加し、業務負担の増大が懸念されます。しかし、これは同時に、設計や施工の品質向上に繋がり、消費者にとってはより安全で安心な住宅を手に入れることができるというメリットもあります。 これらの法改正は、住宅会社に一時的な混乱をもたらすかもしれませんが、これらを機に業務プロセスを見直し、高性能住宅を強みとする企業にとっては、競合他社との差別化を図る大きなチャンスとなります。
2025年に向けた2つの構造変化と取るべき戦略
船井総研では、2025年に向けて住宅業界に起きる構造変化を「
集客構造の変化」と「
商品構造の変化」の2つに分類しています。この2つの変化に適切に対応することが、持続的な成長を実現する鍵となります。
1. 集客構造の変化への対応
従来の集客方法が通用しなくなりつつある今、デジタル技術を活用した新しい集客戦略が求められます。
- 生成AI、WEBチャットボットの導入: 顧客の問い合わせに自動で対応することで、業務効率を向上させ、営業担当者の負担を軽減できます。
- MA(マーケティングオートメーション)の活用: 見込み顧客の情報を一元管理し、顧客の興味関心に合わせた情報提供を行うことで、商談化率を高めます。
- インサイドセールスの実施: 電話やオンライン会議ツールを活用し、効率的な営業活動を展開します。
これらのデジタルツールを導入することで、限られた人員でより多くの顧客に対応し、成約率を高めることができます。
2. 商品構造の変化への対応
市場の価格高騰に対応するため、商品の見直しが不可欠です。
- 商品規格の値上げ:建材価格の上昇分を適切に価格に転嫁することで、適正な利益を確保します。
- プレミアムブランドの創出:建売住宅でも高性能な設備やデザインを取り入れたプレミアムブランドを立ち上げることで、高付加価値な住宅を求める顧客層にアプローチできます。
- 高性能規格ブランドの開発:注文住宅では、高品質ながらもコストを抑えた高性能な規格ブランドを開発し、多様なニーズに応えます。
4つの成長トレンドに合わせた新規事業
市場の縮小に直面する中で、本業を補完する新たな収益の柱を確立することが、企業の成長に不可欠です。船井総研では、以下の4つの成長トレンドに合わせた新規事業を提案しています。
1. 「非住宅」の成長トレンド
住宅以外の建築分野は、今後も高い需要が見込まれます。
- 倉庫建築、医療福祉建築、畜舎建築、事務所建築、ガレージ建築など、専門性の高い分野に参入することで、新たな収益源を確保できます。
特に倉庫工場建築は、初期投資2000万円で3年後に売上15億円、営業利益1.5億円(営業利益率10%)が見込めるモデルとして注目されています。
2. 「空き家」の成長トレンド
年々増加する空き家は、大きなビジネスチャンスです。
- 空き家の再生販売、活用転貸、解体・リノベーションなど、多様なビジネスモデルが考えられます。
- 買取ビジネスで優位性を確保し、リノベーション技術で他社と差別化を図ることができます。
空き家再生ビジネスは、初期投資1000万円(在庫別)で、3年後に売上6億円、営業利益8000万円(営業利益率13%)が見込めます。
3. 「団塊ジュニア」の成長トレンド
団塊ジュニア世代が本格的なリフォーム期に突入し、リフォーム市場は今後も拡大が見込まれます。
- アフターリフォーム、戸建てリノベーション(減築リノベ)、給湯・エコキュート交換など、既存顧客へのアプローチを強化します。
- 住宅解体ビジネスも、空き家の増加に伴い需要が伸びており、初期投資500万円で3年後に売上3億円、営業利益3000万円(営業利益率10%)が期待できます。
4. 「インバウンド」の成長トレンド
コロナ禍が明け、増加しているインバウンド需要も大きなチャンスです。
- 外国人向け不動産売買、民泊、貸別荘など、インバウンドをターゲットにした事業展開が可能です。
インバウンド不動産ビジネスは、初期投資800万円で3年後に売上1億円、営業利益2000万円(営業利益率20%)が見込める高収益モデルです。
持続的な成長を実現する「コングロマリット化」戦略
これらのトレンドを活かし、持続的な成長を実現するためには、本業を安定させながら複数の新規事業を展開する「コングロマリット化」戦略が有効です。
- 本業の成熟化と安定化:まずは本業の業績が安定していることを確認します。
- 未来の収益事業の探究:本業を担保に、次にくる成長市場を積極的に探します。
- 新規事業の選択と拡大:まずは本業周辺の業種から新規事業を選び、他社のノウハウも活用しながら成功確率を高めて事業を拡大します。
- 複数事業の展開:複数の新規事業を展開し、企業をコングロマリット化することで、2ケタ成長と高収益を実現します。
この戦略により、売上20億円、営業利益率5%の企業が、売上100億円、営業利益率10%の高収益企業へと変貌を遂げることが可能になります。
最後に
2025年を目前に控え、住宅業界は大きな転換期を迎えています。市場の課題や法改正に不安を感じるかもしれませんが、これらは同時に、新しいビジネスモデルや成長戦略を考える絶好の機会でもあります。
船井総研は、このような変化の時代を勝ち抜くための経営戦略を、お客様一人ひとりの状況に合わせてご提案します。
- 経営に課題を感じている
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これらのご相談を無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
