CONSULTING COLUMN
最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ
注文住宅の経営フォーマットは、業態×店舗数×営業人員×パーヘッド(1人当たり売上高)で年間棟数が決定します。業態とは、総合展示場なのか?自社の単独展示場なのか?移動式展示場と店舗なのか?完成見学会なのか?店舗数とはそのままで店舗の数です。営業人員は、総合展示場なら1展示場当たり4~5人、単独展示場は規模感によって異なりますが5~15人、移動式展示場と店舗は5~20人、完成見学会は2~5人というのが人員配置のひとつの目安です。パーヘッドは5~8棟です。
年間棟数を増やすためには、注文住宅の経営フォーマットをベースに考えると掛け算ですので、店舗数を増やすか?営業人員数を増やすか?パーヘッドを増やすか?というどれかの変数部分を増やすことですが、会社として取り組む優先順位は、営業人員、店舗数、パーヘッドの順番です。なぜなら、店舗数を増やすにも営業人員が増えなければ店舗数を増やすこともできません。パーヘッドに関しては言い換えれば生産性向上ですが、この3つの中で実は最も難易度が高く、何より他の2つとは違い、計画的に進めることは困難です。実際に業績が伸びている注文住宅会社を調べたところ、パーヘッドだけが増えているところで伸びている会社はありませんでした。それよりも最も業績アップに寄与していたのは、営業人員の増加。強いては店舗数の増加でした。つまり、昨年と比べて期初の時点で営業人員が減っている時点で、昨年よりも業績を伸ばすのはかなり困難ということになります。
それだけ営業人員の確保は業績アップのセンターピンで、業績に直結します。人の採用こそ経営者の一番の仕事です。採用ファーストではなく採用狂いでなくては、人は採用できません。業績が伸びている会社の経営者ほど、採用に関わる時間が圧倒的に多いのです。そこで今回のコラムでは、注文住宅会社の採用戦略について一緒に考えていきましょう。
建設業の主な倒産理由はコロナではなく、物価高と人手不足が2代倒産要因です。 特に人手不足については、高齢による引退や転職による流出等で事業が立ち行かなくなって倒産や廃業となるケースが増えています。そのような状況下で人を採用するのは簡単ではありません。だからこそ計画的に取り組まなければならないのです。営業人員の採用に絞って話を進めると、新卒採用か中途採用の2つです。新卒採用のメリットは、日本の学校だと3月卒業で4月入社というタイミングが決まっているので、人員計画が立てやすく、まっさらな状態で入社しますので企業文化を継承しやすい傾向にあります。デメリットは、会社の戦力として活躍してくれるまでに時間とコストを要する点と、社会経験が足りないことでギャップを感じやすく早期退職の懸念もあります。また、景気やそのときの社会情勢の影響を受けやすく、毎年決まった人数を採用することができるとは限らない点です。ただ何事もメリットとデメリットはありますので、売上10億円が見えてきた時点で新卒採用を始めるべきです。
中途採用に関しては、即戦力人材を採用するのか?未経験人材を採用するのか?でかけるべき適正な費用も、今後の事業計画も変わってきます。経験値は問わないとしても、新卒社員とは違いある程度の社会人経験を積んで入社しますので、入社後の研修コストや戦力になるまでの時間を抑制できます。中途採用の最大のメリットは、採用者が持つ人脈を得られることです。要はリファラル(社員紹介)採用が期待できる点で、優秀な社員のお友達も優秀であることが多いです。デメリットは、前職のやり方や考え方などが染み付いてしまっているため会社の方針になじめず、せっかくコストをかけて採用したにも関わらず、すぐに転職されてしまうリスクがあります。
まとめますと、基本的には新卒採用で計画採用を行いながら、退職等でどうしても欠員が出てますので、中途採用は補充採用という位置づけで、どちらか一方だけではなくどちらも両方で取り組むのがベストです。
令和5年(2023年)8月に厚生労働省がリリースした「令和4年雇用動向調査結果の概要」によると、離職率はコロナ禍の2020年は14.2%、2021年は過去14年間の中でも最も低く13.9%で、2022年は15.0%と1.1ポイント上昇しました。コロナ前の2019年の離職率が15.6%でしたので、あくまで予測ですが2023年は2022年よりも増えると思われます。産業別で見た場合、2022年の建設業の離職率は10.5%でした。因みに最も離職率が高かったのは、宿泊業・飲食サービス業で26.8%でした。
総務省統計局の「労働力調査」によると、新卒採用は応募者数の減少による売り手市場(学生有利)ですので、企業側の新卒採用ニーズは高いものの苦戦が懸念されます。一方、2024年の転職市場動向は企業の採用活動が活発化しており、2023年12月の求人倍率は3.22倍で、転職希望者数は前月比87.7%との調査結果から、企業にとっては採用における競合が増加する見込みです。また、転職希望者の就労ニーズはコロナ禍を経て多様化しており、所謂、コロナで様子を見ていた転職希望者が昨年に引き続き今年も活発に動くと予想されます。これは企業側にとってはチャンスです。
どうしても採用となると、せっかく採用したのに離職するのが気になってしまうところではありますが、離職に目を奪われることなくいかに自社で働く仲間を増やしていくかを考え、行動をすべきなのです。コンサルティングの経験から、毎年110%以上成長している会社だと離職率は建設業の平均よりも一時的ではありますが2倍から3倍高くなります。どう捉えるかですが、離職率の高さは成長痛で、変革の過渡期であるという見方もできます。急に運動をすると3日間ぐらい筋肉痛になりますがいずれ納まります。今流行りのマッチョなカラダになるには、筋肉の破壊と再生を繰り返すことです。
新卒採用をこれから始めるとなると、最短でも2026年4月の入社になりますので、即時業績アップを目指すなら中途採用になります。冒頭で、人の採用は経営者の一番の仕事と書かせていただきましたが、当然ながら社長ひとりで採用活動を行うのは不可能です。うまくいっている会社ほど、全社員を巻き込んで採用活動に取り組んでいます。社員の巻き込み方は、近年、企業が多く取り入れているカジュアル面談では、応募者より少し先輩の社員が対応したり、何よりリファラル(社員紹介)採用への協力を募っています。リファラル採用の予算を取って、紹介者には報奨金を用意したり、飲食代を申請できるようにしていたり、社員が積極的に採用に携われる環境を整備しています。この後ご説明しますが、ダイレクトリクルーティングよりリファラル採用の方が圧倒的に費用を抑えられます。
そのようなことに取り組まなければならない背景としては、中途採用市場におけるダイレクトリクルーティングやリファラル採用が増加しているからです。ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者へ直接アプローチをする採用手法のことで「ビズリーチ」などが有名です。求人媒体は採用ができなくても掲載するだけで費用がかかり、人材紹介では採用できたとしても費用が割高になる可能性があります。そのため採用費も年々上昇しています。なので、採用コストを抑えつつも、自社にあった優秀な人材を採用することができる可能性があるダイレクトリクルーティングが近年注目を集めているのです。
採用活動も集客活動も同じで、就職、転職希望者が従来の求人掲載メディアから反響があるのを待つのではなく、企業側から応募者にアプローチし、自社を選んでもらうという攻めの採用活動が求められています。また求人数が増えている状況で、人材紹介会社はより紹介して成約しやすい大量採用をしている大手企業を優先し、なかなか中小企業には紹介しなくなる可能性もあります。今の転職バブルを勝ち抜いて採用を推進させていくには、ダイレクトリクルーティングとリファラル採用の2つを軸に進めていく必要性があるのです。