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最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ

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激変する2024年の住宅業界の工務&組織予測

船井総合研究所 住宅支援部の西村茂和です。

12月は4回に亘り2024年の住宅業界の時流予測をお伝えさせていただきます。前回の3回目は営業の時流予測で、簡単に内容を要約すると、2024年の住宅業界の営業予測は下記の3つで①契約率15%をキープしなければ事業計画自体が成り立たななる②来場前の接触と準備の重要性がより増す③オンライン商談が一気に進むため対応が必要。ということで、集客環境が劇的に変化している昨今において、当然ながら住宅営業も変革が必要であるということを提言させていただきました。

変化はチャンスです。変化とは外部環境だけを示すものではありません。外部環境より自社が変化しているかどうかの方が大事です。市場が縮小している中、昨年と同じことをしていては現状維持をすることも厳しく、概ね業績は減少します。革新3割、保守7割という言葉がありますが、今まで行ってきたことをすべて止めるということではありません。さすがにそれはリスクです。保守7割とは、今年順調に成果が出たものは来年も継続すべきです。反対に今年成果がでなかったものを革新3割として、新たなことにチャレンジしなければなりません。因みに革新3割のうちすべて成功する必要はありません。恐らく3割のうち1割が成功すれば、それが全体の3割以上に影響を与えます。だからこそ、考えて動くまでに時間をかけるよりは、動きながら考えるべきなのです。

商品、集客、営業は攻めの戦略です。一方、工務や組織は守りの戦略です。企業の成長段階によって異なりますが、攻めの一辺倒だと必ず成長の踊り場が訪れます。踊り場は企業成長には必要なフェーズですが、踊り場は休憩期間ではなくなく、あくまでさらなる成長をするための助走期間です。そのためにも守りの戦略も必要です。それでは2024年の住宅業界の工務&組織予測についてお伝えさせていただきます。

守りの戦略のポイントは生産性向上

住宅業界は生産性への意識が低い業界です。それは、生産性よりもいかに売上を上げるかに主幹が置かれてきたからです。当然、売上も大事ですが儲かっていなければ意味がなく、そのためにはいかに利益を最大化させていくかが課題です。それには1人当たり生産性(年間で1人当たりどのくらいの利益を出しているか)が非営業部門・営業部門の両方で5000万円以上にする必要があります。5000万円を下回ると、売上が低いか社員数と売上のバランスが悪い状況だと言えます。集客予測の際にでもお伝えしましたが、集客にかかる費用も上昇しています。契約単価の目安は50万円ですが、この単価が100万円を超えてくると儲けが出ていない傾向にありますので、契約率を上げたり契約日数を短くしたりする取り組みも必要です。

生産性を上げるためには、乱暴な言い方をすれば、人を減らすか?1人当たりの業務量を増やすか?の2つに1つです。但し、人を減らすと生産性は一瞬上がりますが、業務量自体が減っているわけではないので残された人にその負担がのしかかり、結局は人を減らす前と同じ状況に戻るだけです。採用コストと採用にかかる時間(時間もコストです)は膨大ですので、安易に人を減らすのはオススメしません。なので、1人当たりの業務量を増やすのも現実的ではありません。生産性の向上で見るべきポイントは人ではなく、直間比率です。直間比率とは、会社全体の人数もしくは人件費における直接部門と間接部門の比率のことを指し、この比率が低いほど間接部門のコストがかかっていないことを示しており、効率的に事業運営ができていることがわかります。この直間比率の理想は5:5です。10名の組織だとしたら、営業部隊が5名、設計やコーディネーター、工務や総務事務が5名ということになります。儲かっていない会社ほど間接部門の人員が分厚いという共通点もあります。

生産性の面では現場環境も変化しています。現場監督が現地に赴かなくても状況を把握できるよう、工事現場にカメラを設置するなどの取り組みが近年ようやく見られるようになりました。短期間で人の能力を倍増させるのはほぼ不可能です。しかし、こうしたデジタルツールを活用することで生産性向上は可能なのです

激変する2024年の住宅業界の工務予測

2024年の住宅業界の工務予測は下記の3つです。
・デジタルツールの本格導入
・工務業務の最適化と標準化
・未経験者や若手の採用と育成

デジタルツールの本格導入に関しては、生産性を向上させる無人カメラや遠隔現場管理などのシステムを活用することです。その前提として、活用することに抵抗を持たないことです。こうしたことは知っている知っていないというより、抵抗なく素直に受け入れて取り組んでみるか?それとも最初から拒絶して受け入れないか?が分岐点です。人は基本的に新たなことに取り組むのに後ろ向きです。携帯電話が普及し始めたときも「そんなものを持っていたら頻繁に電話がかかってきて迷惑だから絶対に持たない」と言う方もいましたが、今では携帯電話を持っていないことの方がリスクで、携帯電話からスマートフォンに進化し、より生活は便利になりました。こうした技術革新は進化することで不便になるものはありません。拒絶するよりも、一旦素直に受け入れて取り組んでみるとことが、そもそもの時流適応です。

工務業務の最適化と標準化に関しては、利益を確保するためにシステムツールの選び方と運用がポイントになります。デジタルツールは取り入れることが最初の一歩ですが、そのツールを使うことが当たり前にしなければなりません。むしろ、パソコンやスマホのようにそのツールがなければ仕事にならない環境にしなければ、いつまで経ってもやらない人に合わせることとなり、組織として進化しません。服選びと一緒で、そのためにシステムツールの選び方と運用が重要です。業務の最適化とは、既存の業務プロセスを見直して、生産性の向上などにつなげる取り組みのことで、無駄な工数の削減や働き方や生産性の改善が行えます。もうひとつの業務の標準化とは、特定の人しかその業務を遂行できなかったり、品質に偏りが出たりといった属人化を防ぐことが目的で、業務標準化を進めるために業務フローの標準化とタスクの標準化は必要です。そうすることで、未経験者や若手の採用を育成していける仕組みが構築できます。引き続き、経験者採用は難しいので動画活用や育成カリキュラムの整備が必要になり、こうしたこともデジタルを活用することで生産性向上に向けて道が開けるのです。(コラム掲載不要→)激変する2024年の住宅営業はどうなる?気になる組織予測とは?

激変する2024年の住宅業界の組織予測

2024年の住宅業界の組織予測は下記の3つです。
・利益重視の組織体制を構築する
・素直や柔軟性重視の採用活動にシフトする
・アウトソーシングの積極的な活用する

利益重視の組織体制を構築するに関しては、生産性向上を目的に、目指すべき業績に対して適正な営業人員数と適正な直管比率に組織を組み直すことです。どんなに地球にやさしいエコドライブを心掛けていても、燃費が悪い車に乗っていては限界があります。家も昔の家よりも今の家の方が消費電力を抑えられ、省エネ生活ができるだけなく健康的且つ快適に暮らすことも可能です。業績が好調な会社ほど組織再編が頻繁に起こります。例えば営業スタッフであれば、3ヶ月契約がなければクビにするのではなく、別の事業への転籍になります。それはあくまで降格ではなく転籍です。環境を変えることで不振だった営業スタッフが活き活きと仕事に取り組み、成果を上げるのを何度も目の当たりしてきました。人に関しては、指示する側も受け入れる側も意地を張って固執し過ぎないのが大切です。

素直や柔軟性重視の採用活動にシフトに関しては、誰かひとりが飛び抜けて高レベルな業務を行えているということよりも、誰でもある一定のレベルまではできるということの方が組織として最大のストロングポイントになります。そのような組織体制を構築するには、素直な性格で、柔軟な考え方を持っている人を採用することです。とは言え、どうしても採用がうまくいかなければ、そのときは柔軟にアウトソーシングの積極的な活用も考えるべきでしょう。住宅業界はそもそも職人気質の経営者が多く、自分たちのことは自分たちで行うという意識が強い傾向にありますが、時代は常に変化と進化を繰り返し、次々と便利なサービスやツールが出てきますので、利用した方が良い場合も多分にあります。自社でもできるが、自社で取り組む前に他社に任せる方が経営リスクは低減されるかもという時代の変化に適応した考え方も必要だと強く感じます。

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