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大倒産時代を生き抜くための今後の住宅経営のキーワードとは?

東京商工リサーチの発表によると、2023年10月の負債1,000万円未満の企業倒産は前年同月比30.5%増で、5月から6ヶ月連続で前年同月を上回っています。また10月では3年ぶりに前年同月を上回り、2009年以降の15年間では、2010年に次いで3番目の多さとなったとのことで、産業別では、最多がサービス業他で前年同月比33.3%増。次いで卸売業が同月比16.6%減、建設業が同月比±0.0%と続いています。

倒産原因別は、販売不振が同78.9%増と7割を占め、小・零細企業の業績回復の遅れが倒産につながりつつあります。資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が前年同月比33.3%増で、9割以上になっています。形態別は、すべてが消滅型の破産で、負債1,000万円未満の倒産がすべて破産になるのは7月以来で今年6度目です。負債1,000万円未満の倒産は、人的・資金的に制約がある中小・零細企業が中心で、業績回復が遅れ、過剰債務を抱えるなかで経営再建は難しく、事業継続をあきらめるケースが多いとのこと。

3月決算で10月が上半期だった上場している大手企業の決算報告を見ていると、売上は増収していても利益が減益しているケースが散見されます。減益の理由は、物価高による仕入れ価格の高騰と、人手確保のための人件費上昇などのコストアップが主な要因となっていますが、それが中小・零細企業の場合だと資金繰りに大きな負担となります。今は人を採用すること自体難しくなっており、尚且つお金がかかる時代になっているのです。そこで今回のコラムでは、大倒産時代を生き抜くための今後の企業経営のキーワードについてお伝えさせていただきます。

採用難による人手不足と採用コストの増加が企業経営を圧迫

人手不足や賃金の高騰というと、真っ先に考えられたのが外国人労働者の確保でした。しかし、今はコンビニやファストフードチェーンを利用しても、円安などの影響もあってか外国人労働者は減っています。あくまで私個人の感覚ですが、コンビニのレジ担当は、以前は外国人がほとんどでしたが、今は日本人の方が多いように感じます。あとは無人レジの導入が進み、レジは日本人か無人かという感覚になりました。コロナが明けて観光客の外国人は目に見えて増えましたが、労働者としての外国人は減った、もしくは増えていない印象です。

東京商工リサーチの発表によると、2023年10月の人手不足関連倒産は前年同月比100.0%増で、1月から10月累計で前年同期比141.5%増。これは、2019年に次ぐ2013年以降では2番目の高水準です。現状ペースで推移すると、2019年を抜き、年間最多を更新する可能性も出てきているとのこと。要因別では、人件費高騰が前年同月比800%増、求人難が同月比192%増と大幅に増加してます。また従業員退職も同月比124%増で、求人だけでなく、従業員退職による賃上げを迫られ、経営体力がぜい弱な企業ほど資金繰りに大きな影響を受けているのがわかります。

1月から10月累計の産業別は、最多がサービス業他で前年同期比100.0%増。次いで、運輸業が同月比450.0%増、建設業が同月比127.2%増で、コロナ禍前からの人手不足が一段と深刻さを増しています。2023年10月に最低賃金が引き上げられましたが、人手不足の解消めどが立たない企業も多く、さらなる人件費の上昇は企業収益への影響が避けられない状況です。人材確保に加え、物価上昇に見合った賃上げが望ましく、対応できない企業の倒産だけでなく、先行き見通しが立たず休廃業を加速させることも懸念されます。つまりは「なかなか良い人が採用できなくて…」とか「育成がうまくいかなくて…」とか「相変わらず離職率が高くて…」と言っていられる状況ではなくなったということなのです。

今後の企業経営のキーワードは生産性向上

このような厳しい状況ですが、自社でできる解決策はないわけではありません。解決策は生産性にあります。オックスフォード大学で日本学を専攻し、ゴールドマン・サックスで日本経済の伝説のアナリストとして名をはせたデービッド・アトキンソン氏は、自身の著書の中で日本の中小企業は躍進の可能性に溢れており、中小企業の生産性向上が日本を救うと説いています。今後の企業経営のキーワードになる生産性向上とは、同じ数の労働者が生み出す付加価値をどこまで増やせるかという考え方です。決して、効率的に仕事をするということではありません。むしろ効率化とは真逆にあるのが生産性なのです。

なので、人を減らして無人化すればいいとか自動化すればいいという単純なことではありません。業種にもよりますが人は必要です。例えば農業。ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現するなどを推進している新たな農業であるスマート農業を活用することにより、農作業における省力・軽労化を更に進められることができるとともに、新規就農者の確保や栽培技術力の継承等が期待されます。スマート農業の目的は、人を減らすことではなく、ロボットやAI、IoT関連技術を農業分野に活用し、作業の自動化・情報共有の簡易化・データの活用を進めることで、生産効率の向上や農業従事者への負担減し、新規就農者の確保や栽培技術力の継承を目指しているのです。

つまり、その産業における旧来の構造を変えなければならないのです。数年前に「下山経営」という本が出版され話題になりました。下山経営とは、人口減、高齢化、格差化を前提として行う経営スタイルの考え方で、同じ山登りでも登るとき下るときの注意点は異なります。今こそ柔軟に経営者が考え方を変えなければ生き残っていけないのです。

求められている社内業務を誰でもできる仕組みへの構造変革

住宅業界は、業界全体に影響を与えたリーマンショック時以上に、今年2023年に入ってから倒産が相次いでいます。市場規模を表す新設着工棟数は、2021年のコロナ禍に起こった巣ごもり需要により、コロナが直撃した2020年と比べて約107%増えましたが、2023年は減少傾向で、野村総合研究所の試算によると2040年度には2022年度比べて36%落ち込むとの予測をされています。需要側となる新築住宅を建てるお客さまは右肩下がりで下がっていきますが、供給側の住宅会社の技能者数は2040年には2020年比で約37%減少する見通しで、需要も減りますが供給も減るというフェーズに突入していきます。

企業の生産性を表す指標として、社員1人当たりの売上高がありますが、住宅会社の場合だと5,000万円はないと会社としては儲かっていないと言えます。売上10億円の企業規模だとしたら適正な社員数は20名になります。反対に、社員数は20名なのに売上が6億円ほどだとしたら、業務におけるムリ・ムダ・ムラが発生している可能性があります。生産性を上げるには、直間比率を上げることです。直間比率とは、会社全体の人数もしくは人件費における直接部門と間接部門の比率のことを指し、この比率が低いほど間接部門のコストがかかっていないことを示しており、効率的に事業運営ができていることがわかります。住宅会社業界で売上高成長率1位の会社は、引き渡し棟数が前年比136%増ということだけではなく、経常利益率12.8%と生産性の高い経営を行っているのが特徴です。その要因のひとつが、通常であれば営業は契約までで、契約後からの図面の提案や見積りは設計や工務が行うのが通例ですが、すべてひとりの営業担当者がその場で提案できるシステムを導入しています。

この事例からもわかるように、少子高齢化社会、社内外の労働人口減少に向けて、社内のプロフェッショナル業務を見直して、誰でもできる仕組みに社内業務の構造を変えていかなければならないのです。

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