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最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ

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住宅業界の強者がさらに強者になる2つの理由と市場縮小期に自社が一番になる3つの方法

船井総合研究所 住宅支援部の西村茂和です。

国土交通省が2023年12月27日に発表した2023年11月の全国新設住宅の着工数は、66.2千戸となり前年同月比では‐8.5%、前月比では‐7.7%と、前年比では6ヶ月連続の減少となりました。2022年の新設住宅着工数は86万戸。野村総研の予測値によると2023年は88万戸。2024年が86万戸で2040年には2022年基準で36%減の55万戸まで落ち込む見通しです。所謂、新築戸建ては着工数の約30%ですので、16年後には16.5万戸です。2009年のリーマンショックで78万戸まで一気に落ち込みましたが、その後、2回に亘る増税、相続税の制度改正、住宅ローン減税、コロナショック等により、増えたり減ったりしましたが、直近10年間の着工数の平均を取れば84万戸でした。それが2024年を期に増えることはなく、今後10年間の平均は78万戸と減少フェーズに突入します。

このように住宅市場は増えていきませんので、企業間の業績の二極化は益々進みます。低層住宅会社数の推移を見ていると、2021年度は会社数全体で2.9万社、2019年の3.2万社より約10%減少していますので、つい5年ほど前までは、住宅業界全体の需要(着工数)は減りますが、供給(企業数)も減るので、1社あたりの割り当て(棟数)は変わりませんとセミナー等でお伝えしていましたが、結果は間違いでした。市場が縮小するということは、より地域一番店にお客様は集まります

実際に、全体の着工棟数は減っていますが、地域トップビルダーの売上(棟数)はむしろ増えているのです。これは強者同士がぶつかり合ってパイを奪い合っているのではなく、強者が弱者のパイを奪って伸びているという構図です。だから業績は二極化するのです。因みに、棟数別で見た場合、200~500棟ビルダーは、128社から148社に社数が15%増えているとともに棟数も10%増えています。つまり、本気で一番を目指す会社しか生き残れない時代が来ているということです。そこで今回のコラムでは、市場縮小期に自社が一番になる3つの方法について一緒に考えていきましょう。

住宅業界の強者がさらに強者になる理由その1

もう少し長いスパンで住宅業界の推移を見ていくと、今から18年前の2006年度の着工数は126万戸で社数は5.5万社でした。着工数は約68%減少しており社数は約52%減少しています。つまり、社数の減少以上に着工数が減少しているのがわかります。ということは厳密には、生き残っている会社の割り当ては増えているのです。だからと言って、生き残ったすべての会社で平等に棟数が増えているわけでは当然ありません。冒頭でお伝えしたとおり、弱者のパイを奪って強者はさらに強者になっています。その要因は2つあります。

1つめの要因は、棟数シェア率11%以上の地域一番店と、年間数棟の工務店との圧倒的な違いは、棟数や売上よりも情報量です。情報化社会により、以前よりも情報の価値は落ちているかも知れませんが、情報には実際に携わった人から直接聞く一次情報と、第三者から間接的に聞く二次情報、ネットなどの誰が発信元なのかが特定しにくい三次情報の三段階があります。地域一番店は情報の量だけでなく、質の高い一次情報が集まってきます。そしてその情報が入ってくるスピードも速いのです。質の高い多くの情報が早く入ってくるので、他社に抜きん出て対策が取れます。そのことが目に見えない業績アップのかなりのアドバンテージになっています。業績が伸びている会社ほど他社情報を収集し、他者の動きを把握しています。反対に業績が伸びていない会社ほど他社の動きを知りません。一番の差は、経営者が情報の重要性を理解し、積極的に収集するために動いているかどうかです。

あとは、当然ながらそのような会社には優秀な人材が入社してきます。人材のレベルは会社のレベルと比例します。売上5億円のときに入社してくれる人材と、売上50億円のときに入社してくれる人材では残念ながら違います。良い人を採用するための解決策は業績を伸ばすことです。このように一番を目指して一番になるとは、単に売上や利益だけでないご褒美がもらえます。なので、業績の二極化は益々進みますし、だから、一番を目指さなければならないのです。

住宅業界の強者がさらに強者になる理由その2

イノベーター理論というマーケティング理論をご存じでしょうか?イノベーター理論とは、1962年にスタンフォード大学の教授のエベレット・M・ロジャースが自身の著書である「イノベーションの普及」の中で提唱したもので、消費者を、イノベーター(革新者)2.5%、アーリーアダプター(初期採用者)13.5%、アーリーマジョリティ(前期追随者)34.0%、レイトマジョリティ(後期追随者)34.0%、ラガード(遅滞者)16.0%の5つの層に分類し、イノベーションがどのように市場に普及していくかを提唱した理論です。

イノベーター(革新者)は、革新的な商品を誰よりも早く購入することに喜びを感じ、重視するのはあくまでも新しさそのものであるために、商品の良し悪しやベネフィットなどについてはそれほど問題にはしませんが、全体の2.5%と少人数派です。アーリーアダプター(初期採用者)は、流行に敏感で情報収集を積極的に行い、自身の判断で商品やサービスを購入します。また情報を積極的に発信し、アーリーマジョリティやレイトマジョリティに対する影響力が大きいことも特徴で、それによりオピニオンリーダーやインフルエンサーなどと呼ばれることもあります。アーリーマジョリティ(前期追随者)は、情報感度は比較的高いものの、新しい製品やサービスの採用に慎重です。レイトマジョリティ(後期レイトマジョリティ(後期追随者)は、新しい商品やサービスに対して懐疑的な客層、まわりの動向を注意深くうかがい、半数を超える人たちが受け入れたことを確認するとようやく購入します。ラガード(遅滞者)は、もっとも保守的な客層で、新しいものに対して関心がまったくなく、むしろ新しいものは受け入れたくないと考えています。

この5つの消費者層のうち、皆さんはどれに該当しますか?実はこれが業績に直結しています。業績を伸ばす地域一番店クラスの会社の経営者は、イノベーターかアーリーアダプターです。自社の業績アップに寄与すると思ったものをすぐに導入します。少なくとも業績を伸ばすにはアーリーマジョリティには入っていなければ、変化する時流に適応できていませんので業績は伸びないのです。(コラム掲載不要→)市場縮小期に自社が一番になる3つの方法とは?

住宅市場が縮小する中で自社が一番になる3つの方法

このように「市場が縮小するから業績が伸びなくても当然…」という発想をお持ちであれば、その発想を脱却しなければ危険です。「住宅が伸びないから他の業種に…」と考えられているのであれば、それも危険です。結局、本業が儲かっていないにも関わらず、他のことに手を出してもうまくいく確率は低くなります。つまり、既存事業を深堀し安定的事業のポートフォリオ(事業構成)を構築しなければ、その後の発展も難しいのです。そのためには、一番を目指すことを明言することです。ただ一番とは決して売上だけではありません。一番になるためは3つの場所があります。ひとつは売上一番で、商圏において包み込みの戦略でシェア、棟数、売上で圧倒的一番を目指すことです。もうひとつは商品(客層)一番で、一点突破でターゲットを絞り込んだ商品やサービスで、客層から圧倒的に支持されることです。最後のひとつは商圏一番で、自社が最も強い商圏をつくって、そこにおいて事業の多角化などのドミナント戦略で圧倒的に一番になることです。大事なのはどこの一番を目指すかを決めることです。これから一番を目指すとしたら、まずは商品(客層)一番です。そのために質の高い情報収集が必要です。

イノベーター理論に関しては、今後は、自社のデータを蓄積し、それを活用するために社内マーケティング力を推進し、素早くDX武装する地域ビルダーが業績を伸ばします。難しい表現を使いましたが、シンプルに捉えるなら自社の業績アップに寄与するものであれば素早く取り入れるべきです。導入するかどうかを悩む時間がムダです。要は、判断のスピードが肝心です。

世の中は日進月歩で変化していきます。変化するということはそこにチャンスが生まれます。そのチャンスを見極めてつかみ取るには、その場ですぐに即決することです。その場で即決するためには、判断材料としての情報が必要になってきます。この好循環を生み出せるかどうかです。AIやロボットが業務の代行をする時代は必ず訪れます。そうなったとしても最終的に決断を下すのは人です。益々人の本質がリソース(資源)となるのです。

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