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最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ

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世界一わかりやすく解説!住宅業界におけるM&Aの最新事情と経営戦略としてのM&Aとは?

船井総合研究所 住宅支援部の西村茂和です。

以前、一度ご紹介させていただきましたが、企業の成長要因を明らかにした書籍『The Granularity of Growth』によると、企業成長に寄与する3つの要因とそれぞれの要因が影響を与える割合は下記の通りです。
①成長している市場に参入する(65.3%)
②既存の事業のシェアアップを図る(3.9%)
③M&Aを行う(30.6%)

このコラムでは、主に3つの中で①成長している市場に参入することと、②既存の事業のシャアアップについて書かせていただくことが多いですが、今回初めて③M&Aについて書かせていただきます。「M&A?うちには関係ないよ!」と思われたかも知れませんが、それは買主としてですか?売主としてですか?M&Aというとどうしても“買う側”のイメージが強いですが、当然“売る側”もあります。また買う側(買主)の業績が上がるイメージをお持ちかも知れませんが、買われる側(売主)もM&Aによって業績が上がるのです。

なので、M&Aは「うちには関係ない」と思うよりは、企業を存続さえ、持続的に成長させていくためのひとつの要素であると捉えるべきで、ものは捉え様で「うちにも関係あるかも」と思われる方が賢明です。とは言え、M&Aを正しく理解し、自社の成長にどのように活かせるのか?という視点を持つために、今回のコラムでは、住宅業界におけるM&Aの最新事情と世界で一番わかりやすいM&Aの解説についてお伝えさせていただきますので、一緒に考えていきましょう。

M&Aが企業成長に寄与する背景(理由)とは?

本題に入る前に、なぜM&Aが企業成長に寄与するのか?の背景を正しく理解しておく必要があります。住宅業界は成熟期を超え、衰退期にあります。国土交通省の住宅着工統計によると、令和3年度の新築住宅着工戸数は866千戸で、前年の812千戸よりは増加しているものの、平成24年度から令和元年度の数値に比べると減少傾向です。今後は移民を受け入れ、外国籍でも住宅ローンが組めるなどの法整備が進まない限り、少子高齢化に伴う人口減少や将来所得の不安から、市場の縮小及び停滞の状況は続いていくものと考えられます。

このように住宅ビジネスという市場が伸びないのです。企業成長に寄与する3つの要因の中で、最も高い割合の成長している市場に参入するという視点で捉えるのであれば、M&Aというのは成長している市場に当たります。市場を捉える際に、人口や世帯という需要側を捉えがちですが、供給側の視点でも捉えるべきです。供給側とは住宅会社や工務店、ビルダーです。東京商工リサーチによると、2022年の建設業の倒産件数は3年ぶりに前年より増加し、1,194件(前年1,065件)となっています。

また、帝国データバンクによると、2022年の物価高倒産(=法的整理企業のうち、原油や燃料、原材料等の仕入れ価格上昇、取引先からの値下げ圧力等で価格転嫁できなかった値上げ難等により、収益が維持できずに倒産した企業)の件数は、全業種で320件(前年比2.3倍)となり、建設業はそのうちの70件を占めています。資材高騰は落ち着きつつありますが、値が下がるということはなく、依然高止まりの状況が続いています。価格転嫁が十分に進まない状況が続く中、粗利率の回復が見込めなければ今後も物価高倒産は増加傾向で推移すると考えられます。

住宅業界におけるM&Aの最新事情

住宅業界における2023年の時流は下記の3つだと予測しています。
①商品の多角(マルチブランド)化
②集客のデジタル化
③業務の標準化

①は、以前は少数であった需要が顕在化してきています。これまで住宅会社は、子育て4人家族をメインターゲットにしてきましたのが、今は未婚のカップルや、夫婦ふたり、シングルマザーや年配夫婦など、ニーズが多様化しています。そうした消費者の需要を把握し、それぞれに合ったブランドを持つことが重要です。②は、今はチラシだけでの集客は不可能で、SNSや動画など、集客のデジタル化は言わずもがな必須です。③は、住宅業界はその特性から業務が属人化しやすい業界、且つ慢性的な人手不足で会社が存続していくためには採用・教育を含めた組織づくりが大きな課題です。これらの課題を解決するためには、職人の育成、資格取得の支援、有資格者の採用等の実施は当然必要になりますが、並行してこれまで属人的だった業務を標準化(マニュアル化)し、その人以外でも業務を行えるようにすることと、標準化による業務効率化も急務です。

これらの時流を背景に、買主側としては、現在自社が保有している商品群に不足している、もしくは強化したいブランドを持つ会社を買収すれば、①多角(マルチブランド)化を容易に実現することができます。もちろんそのブランドを自社が持つことの意義や、経営の考え方の違いの検討は必要になりますが、より多くの消費者層に対してサービス・商品を提供することができます。また、②集客のデジタル化、③業務の標準化を実現するためのM&Aは、①とは異なりノウハウが主な買収対象となります。その会社が持つ一部に特化したノウハウをグループ全体に活用できれば、売上高や利益高等の数字上以外でもM&Aに意味を見出すことができるのです。

自社の未来を見据えての経営戦略としてのM&A

売主側としては、買主側のポイントと表裏一体の関係にあり、特殊なブランドを持っている、集客力に長けている、仕入力に長けている、一人当たり生産性が高いといった特徴があれば、M&Aにおいて優位に立てると考えられます。まずは買主側・売主側共にM&Aを業界の中で勝ち残っていくための経営戦略の一つと捉えることが重要です。

買主と売主というわけ方の他に、複雑に見えるM&Aも大きくわけて2つのパターンがあります。事業継承型M&Aと成長戦略型M&Aです。事業検証型M&Aとは「社長の自分がいなくなったらどうなるだろうか?」「後継者は誰にしたらいいか?」「株価対策・相続対策をどうしようか?」というニーズで、社長の高齢化や病気、後継者不在、経営不振といったことがきっかけになっていることが多い傾向です。成長戦略型M&Aとは「どうやったら最高の条件でEXIT(ベンチャービジネスや企業再生などにおいて創業者やファンド、投資会社などが第三者に株式を売却したり、IPO(株式公開)をしたりすることにより利益を得ること)できるか?」「自社はどこと組んだら大きく成長できるか?」「業界のシナジーとはどのようなものがあるのか?」というニーズで、過去最高売上・利益、大手へのグループインによる成長、IPOによるキャピタルゲインといったことがきっかけになっていることが多い傾向です。

でも実際、住宅業界でどのくらいM&Aが行われているのか気になりませんか?M&A情報の提供を行うレコフデータによれば、2022年において注文住宅に関するM&Aは14 件です。中でも、同業種もしくは近隣業種による買収が目立っています。同エリアの企業による同業種もしくは近隣業種による買収が目立っており、地域一番店と言われる会社にグループインするケースが散見されます。具体的には、新規出店に関して、土地勘のない新規エリアに自社で出店するよりは、既にそのエリアで事業を展開する会社をM&Aする方がより効果的であると考える買い手が多数存在します。自社の未来を見据えたM&A戦略を考えてみてはいかがでしょうか。

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