CONSULTING COLUMN
最新住宅業界動向コラム / 商圏・業績データ
コロナ禍を経て、東京や大阪などでは大規模な展示会もリアルで開催されるようになりました。それに伴い、企業間同士の訪問や視察などのリアルな交流も再開されています。船井総研では、世界の超先進企業・超成功企業から自社が進むべき未来の形を模索し、自社の経営モデルとしてまねてもらうことを目的に、2011年から「グレートカンパニー視察セミナー」と題して海外視察を企画してきました。これまでに訪れた視察先は20都市100企業以上で、のべ1200名以上の経営者の方にご参加いただきました。
以前と比べ海外渡航もかなり緩和されたとは言え、100名単位で視察に行くのにはまだハードルがあるため、コロナで中止していた3年ぶりに、今回は初めて国内のグレートカンパニーを巡る「グレートカンパニー視察ツアーin九州」を10月4~5日の2日間にわたり開催しました。お客様、スタッフなど総勢100名以上で訪問した視察先はどこも非常に見どころが多く、よいお話をお聞きできたほか、ご参加いただいた方の満足度もとても高い会となりました。
そこで今回と次回の2回にわたり、その視察の模様をレポートします。今回のコラムでは、2022年グレートカンパニー大賞を受賞されたシアーズホームグループHDと、2022年グレートカンパニー賞「働く社員が誇りを感じる賞」を受賞された関家具についてお伝えさせていただきます。この2社を通じて、斜陽業界における地域No.1企業の今後の事業戦略について考えていきます。
家具業界は、住宅業界の10年から15年後先を進んでいると言われています。今の家具業界を少し解説すると、業界構造としてニッチな高級家具市場と低価格家具の二極化が進行しています。特に低価格市場が占めるシェアは高い状況となっています。そんな低価格帯市場は大手の出店攻勢が続き、異業態からの参入も相次ぐなど、国内家具・インテリア市場は拡大する低価格家具市場のパイを取り合う厳しい競争が続いています。
好調な大手とは対照的に高級家具店や町の家具店は苦戦しています。年商10億円以上の大・中型店舗の売上は伸びていますが、高級家具店やセレクトショップなどアッパーミドルの価格帯を得意とする家具店は業績が伸び悩んでいます。大規模ショールームや自前のネット販売チャネルを持たない小型店舗や零細店舗ではより苦戦している状況です。コロナ禍で家具・インテリアの買い替え需要は増加したものの、多くが低価格帯に流れ込んでおり、こうしたラインナップに勝る大手やEC専門店と小規模店で業績の二極化がより鮮明となっています。業績の二極化と寡占状態の業界構造。このように整理してみると、住宅業界とよく似た傾向が見えてきます。
そのような家具業界で、国内家具の5大産地のひとつ大川市に本社を置き、創業以来54年連続黒字を出している関家具という企業があります。福岡ソフトバンクホークスの本拠地PayPayドームのバックネットに黄色に黒文字の同社の看板を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。家具卸業からスタートした同社ですが、現在では主力の卸売事業の他に、製造事業、小売事業、物流事業の4本柱を中心に現在23ブランドを展開され、家具卸売業界売上高6年連続日本地で年商は200億円の企業です。20~30代のヤングファミリー層をターゲットとしたモデルハウスの設えで同社のブランドのひとつの「クラッシュゲート」を採用されている住宅会社も多いかと思います。
かつて婚礼家具で栄え、箱物(タンス類)、棚物(食器棚等)の家具を中心とした日本最大の家具産地の大川市でしたが、近年は生活様式の変化による輸入家具の台頭で、産地全体が苦境に陥っています。そんな苦境の家具業界に身を置きながらも常に成長を続けてきた関家具。その裏には、新ビジネスを次々と生み出し、事業構造のイノベーションを起こり続けている独自戦略がありました。
今から30年以上前、婚礼家具が絶好調のときに関家具の関社長は社員にこのように言ったそうです。「ヨーロッパやアメリカの家を見れば婚礼家具なんてなく、すべてビルトインされている。婚礼家具はもうなくなるからうちはやらない。次は脚物家具だ」。経営者に必要なのは、まずは今のトレンドを正しく捉えること。ただ今のトレンドではなく、そこから見えるその一歩先を読んだ販売戦略を練ることです。関社長の言う通り、婚礼家具は日本の家の中からなくなりました。
2005年当時の売上構成比は8割以上が量販店向けの家具卸売業でした。それが2021年になると、家具卸売業は50%になり、ホテルや企業向けの法人向け事業が25%、自社ブランドの直営店事業が15%と売上構成比が大きく変わっています。つまり単にブランドを増やしただけでなく、売り先と売り物を増やしていかれたのです。今では3.7万人の大川市で、新卒採用 16年連続2桁採用されているのは並み大抵のことではありません。2000年頃の売上80億円まではトップダウンのワンマン経営でしたが、頼りにしていた幹部社員の一斉退職により、社員のやりたいという気持ちを尊重する任せる経営に度変えられます。それが今の次々と社員発の新規事業が生まれるカルチャー(企業文化)が確立されていきました。
シアーズホームグループHDは熊本に拠点を置き、今では福岡、佐賀、鹿児島とエリア拡大しながら、直近10年間で売上対比6倍の年商270億円で売上棟数930棟以上、経常利益対比7.1倍の19億円、経常利益率7.3%と、2位の企業に2倍以上の圧倒的一番化経営を実践されている企業です。そんな圧倒的一番化経営には①松竹梅戦略②人財戦略③企業ブランディング④エリア拡大戦略4本の柱(戦略)があります。
①松竹梅戦略と④エリア拡大戦略とは、エリア別シェアアップを目的に価格帯別ブランドでビジネスモデルを展開され、持続的115%成長されています。まずは注文住宅の松事業として、ノウハウや知名度の高いFCに加盟し、その知見を増やしながら体制を整えて地盤づくりを行っていきます。そして規格住宅の竹事業、分譲住宅の梅事業と価格帯ごとの自社ブランドを立ち上げ、仕上げとして松事業を自社ブランドで展開することでシェア拡大と高収益化を実現していくという3ステップです。②人財戦略では、家を売る技術(営業の型×セールスフォース活用×教育の仕組み化&実践)のシステム化と体系化により、業界平均の2倍の営業歩留20%超えを実現しています。あとは従業員への還元として、会社の平均年収を毎年5%以上上げ続けることを経営指標とされています。③企業ブランディングとして、地域スポーツ支援、ネーミングライツ、地域観光支援の主な3に年間1億円程度還元されています。このことにより、受注歩留率のアップや紹介、口コミ受注数のアップにつながっています。
10年で売上80億円から210億円の関家具の関社長は80歳で、売上目標2000億円を本気で掲げています。10年で売上40億円から270億円のシアーズホームグループHDの丸本社長は67歳で、1000億円企業に向けて動き出されています。成熟期から衰退期へと移り変わりゆく業界及び商圏において、爆発的な成長を続けている両企業は、とにかく経営者が明るく元気で勢いが感じられます。そんな両社が共通して徹底されているのは、人に対する投資を惜しまないという点でした。
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