皆さんこんにちは、船井総合研究所の松田 崇です。
2026年3月、オープンハウスグループがアパート事業への参入を発表しました。戸建て販売で年間1万棟以上を手掛けるオープンハウスが「OPEN RISE」という新ブランドを立ち上げ、開発から販売、管理までを一貫して手掛けるという内容で、不動産業界では大きな話題になっています。この発表を受けて、「新築アパート販売」という事業に改めて注目が集まっていると感じています。
※出典:株式会社オープンハウスグループ プレスリリース(PR TIMES)
私自身、これまで不動産会社様や建設業・工務店経営者様から、既存事業に加えて新しい収益源をどう作るかというご相談を多くいただいてきました。人口減少が進む中で、既存事業だけでエリアシェアを伸ばしていく成長と合わせて、同じエリアで新しい事業を付加していくという成長の形が、今まさに求められています。
今回は、その新規事業の1つの候補として「新築アパート販売」を取り上げます。元々建設業・賃貸業・収益物件仲介を手掛けていた福岡の会社様が、この事業をスタートしてから5年で売上22億円まで伸ばした実例をもとに、仕入れ、商品・施工、集客営業という3つの観点から、成功の極意をお伝えします。不動産会社様はもちろん、工務店経営者様が新規事業を検討する際にも、参考にしていただける内容です。
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新築アパート販売事業とは、どのような事業か
Q. 新築アパート販売事業とは、どのような事業ですか
土地を仕入れて木造アパートを建築し、土地建物セットで高所得のサラリーマンや企業経営者に販売する事業です。自社のサイトやポータルサイトを通じて集客し、収益不動産として販売していきます。
Q. 販売価格や1棟あたりの利益はどのくらいですか
販売価格は8,000万円から9,600万円が目安で、エリアによっては1億2,000万円程度まで上がることもあります。1棟あたりの販売粗利は、事業立ち上げ初期の段階でおおよそ1,000万円が目安です。
Q. どのくらいの規模で売上を作れる事業ですか
1棟あたりの単価が1億円前後になるため、10棟から15棟ほどの販売で売上10億円規模を作ることができます。少人数の体制でも展開できる点が、このビジネスの大きな特徴です。
Q. 収益不動産の新規事業として、利益率はどの程度期待できますか
少人数で運営できる分、営業利益率10%以上を目指せる事業です。実際に株式を公開している会社様や、この事業に取り組んでいる会社様の中には、営業利益率10%を超えている例が多くあります。
なぜ今、不動産会社の新規事業として注目されているのか
Q. なぜ今、新築アパート販売が新規事業として注目されているのですか
2026年3月にオープンハウスグループがアパート事業への参入を発表したことで、業界内での注目度が一気に高まったことが背景の1つです。年間1万棟以上の戸建てを販売する同社が新ブランドを立ち上げて参入したことで、市場としての可能性が改めて意識されるようになっています。
Q. 金融機関の融資姿勢は事業に影響しますか
大きく影響します。収益不動産販売のビジネスは金融機関の融資姿勢に左右される部分が大きく、現状は融資が比較的つきやすい状況にあるため、各社の販売棟数も伸びやすい環境にあります。
Q. 人口減少が進む中でも、新規事業として成立するのですか
既存事業の市場が縮小していく中でも、同じエリアで新しい事業を付加していくという成長の形として成立します。エリアのシェアを伸ばす成長と合わせて、新築アパート販売のような新規事業を組み合わせることが、これからの企業成長の1つの形になります。
Q. 工務店の新規事業としても検討できますか
検討できます。すでに収益物件の仲介や新築戸建ての販売、土地活用でのアパート建築を手掛けている工務店経営者様であれば、その延長線上で取り組みやすい新規事業です。
新築アパート販売事業は、どのように立ち上げていくのか
Q. 事業を立ち上げる際、最初に押さえるべきことは何ですか
まず、エリアの融資基準に合った利回り・価格帯の商品をしっかり作ることです。商品が固まっていないと、そもそも仕入れも販売もできないため、これが事業の出発点になります。
Q. 事業立ち上げにおける全体の流れはどのようなものですか
仕入れ、商品・施工、集客営業という3つの領域を順番に整えていく流れです。福岡の事例会社様も、この3つの領域それぞれで試行錯誤を重ねながら、5年間で売上22億円まで伸ばしています。
Q. 仕入れから販売決済までの目安期間はありますか
土地仕入れから販売決済まで240日というルールを設けて、短期間で資金を回転させていくことが大切です。この「240日ルール」を軸に、仕入れ・施工・販売のスケジュールを組み立てていきます。
仕入れ編|土地の仕入れ体制はどう作るのか
Q. 事業立ち上げ当初、仕入れはうまくいくものですか
最初から順調にいくとは限りません。事例の会社様も、スタートから7ヶ月間はアパート用地の仕入れが全くできず、仕入れ担当2名が1日100件架電しても苦戦する状態が続きました。
Q. 仕入れが進まないとき、どのように改善すればよいですか
電話中心のアプローチから訪問ベースへ切り替え、仕入れエリアも市内から県内全域へ拡大することが有効です。実際にこの改善によって、2年目には10区画の仕入れに成功しています。
Q. 仕入れの改善はどのように仕組み化していくのですか
アプローチ件数と条件に合う土地の取得件数を毎日記録し、エリアごとの成果を見ながら戦術を調整していく方法です。これを続けることで、必要なアプローチ数と取得件数の関係が見えてきて、仕入れが安定するようになります。
Q. 経験の浅いメンバーでも仕入れ判断ができるようにする方法はありますか
土地の仕入れ試算ツールを導入することが有効です。物件が出た際にすぐ試算できる仕組みを整えることで、経験の少ないメンバーでも購入すべきかどうかを判断できるようになります。
Q. 仕入れ業務はどのようにマニュアル化していくのですか
評価シート、原価の試算表、キャッシュフローの試算表、仕入れ計画書といった書式を統一し、マニュアル化していきます。加えて、駐車場条例や高低差、間口といった土地チェックの視点もマニュアル化することで、NGとなる土地を早期に判断できるようになります。
商品施工編|ウッドショックを乗り越えた事例
Q. 事業拡大の途中で、どのような逆風がありましたか
ウッドショックによって建築原価が上昇し、利益率が低下する時期がありました。この影響で、その年度は販売棟数も一時的に落ち込みました。
Q. 原価上昇にどのように対応したのですか
工務メンバーを専任化し、新しい協力会社を積極的に開拓しました。協力会社が限られていると原価交渉の余地も限られるため、業者数を増やすことで交渉力を確保しています。
Q. 建物の仕様統一は、どのような効果がありましたか
建物仕様を自社で策定して統一することで、設備品などの交渉力が高まり、原価削減につながりました。加えて工務の基準日数も定めたことで、建築期間の短縮と早期販売の両方が実現しています。
Q. 「240日ルール」は実際どの程度まで短縮できていますか
事例の会社様では、土地取得から引き渡しまでを182日で実現しています。240日というルールを目安にしながら、実際にはそれよりも早いサイクルで資金回転させることを目指しています。
集客営業編|高い成約率をどう作るのか
Q. 契約数を伸ばすために、商談数を増やす必要がありますか
必ずしも商談数を増やす必要はありません。事例の会社様では、17期の契約数が26件と増えた一方で、商談数自体は減少しており、商談の質やルートの多様化が成約率向上につながっています。
Q. 契約数が増えた要因は何ですか
リピート販売、金融機関からの紹介、販売代理店との連携という3つのルートが増えたことが要因です。特に金融機関からの紹介は、法人で賃貸収入を増やしたい企業への提案につながり、契約全体の30%を占めるまでになっています。
Q. 事業立ち上げ初期の集客は、どのように行うのがよいですか
初期は不動産投資セミナーを軸にした集客が中心になります。商品スペックの説明よりも、投資家自身の不動産投資のゴール設定を明確にしてもらう内容を重視することが、成約率を高めるポイントです。
Q. セミナー後、個別相談ではどのようなことを行うのですか
セミナーで整理したゴール設定を個別相談で具体的にヒアリングし、それに合った物件種別・エリアを提案していきます。合わせて銀行の事前審査へ早めに誘導することで、購入までの流れをスムーズにしています。
Q. 営業ツールはどのように整備していくのですか
セミナーのアンケート、コンサルティングシート、収支シミュレーション、商品パンフレット、物件ごとの資料を定型化していきます。これらを整備することで、成約率を高めながら販売の仕組み化を進めることができます。
まとめ|新築アパート販売を新規事業として成功させるために
新築アパート販売は、少人数で売上10億円、営業利益率10%以上を目指せる収益不動産の新規事業です。不動産会社様だけでなく工務店経営者様の間でも、この事業への関心は今後さらに高まっていくと考えています。
事業を成功させるポイントは、エリアの融資基準に合った商品をしっかり固めること、仕入れメンバーを配置して月2件の仕入れを実現する体制を作ること、自社ホームページやポータルサイトを活用した集客の仕組みを作ること、そして買い付けにつながる販売フローと営業ツールを整備することの4つです。
すでに収益物件の仲介や新築戸建ての販売、土地活用でのアパート建築に取り組んでいる会社様であれば、この新築アパート販売事業は既存の強みを生かしながら取り組める新規事業の候補になります。ぜひ自社の新規事業戦略の1つとしてご検討いただければと思います。
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